みなさんこんにちは!!
札幌市は東区にある栄町消化器・内視鏡内科クリニックです。
更新が実に約1か月ぶりとなってしまいました。すみません。
ちょっと今月の講演会のスライド作成に勤しんでおりました。
さて,今日から暦の上では3月に突入し,平成も残すところあと2か月です。
この時期になると雪解けが始まり道路がみえてきます。粉塵や残った花粉が舞い始めそろそろ花粉症の時期になってきます。
最近は当院でもアレルギーの患者さんが非常に増加してきました。
アレルギー疾患としては喘息や,アレルギー性鼻炎,結膜炎,アトピーなどが有名ですが,実はこれらのアレルギーの大本は腸内細菌であることがだんだんわかってきました。
ということは消化管のアレルギー疾患も増加している,というより根本である可能性があります。
実際に2019年2月米国から4万人を超える実態調査から成人の10人中1人が何らかの食物アレルギーをもっていると報告されました。
日本のデータはまだ耳にしたことがありませんが,食事の欧米化から米国と同じような状態になってきている可能性は十分にあります。
患者さんにわかりやすいように「腸のアレルギー」と説明しますが,意外とぴんときていない患者さんのほうが多い気がします。
Q「腸のアレルギーってどういうことですか?」
とよく質問されます。医学的には好酸球性胃腸炎,胃腸症,好酸球性食道炎というのが正式名称ですが,実はまだ診断基準が非常に緩かったり,あいまいなところが残っています。
例えば腸であれば,腹痛や下痢,血便をもっていて内視鏡検査の生検で好酸球が高倍率で20ケ以上認められると,好酸球性胃腸炎と診断されます。
実際には十二指腸や回腸では好酸球がもともと多い傾向にあるので,意外と20ケ以上認められる患者さんは多いと思います。
胃や大腸で20ケ以上認められればかなり「腸のアレルギー」である可能性が高いと思いますが,ただ検査をうけただけでは生検までなされず,好酸球性胃腸炎が見逃されている可能性もあります。
もちろん好酸球性胃腸炎,つまり「腸のアレルギー」でも軽微であれば整腸剤や抗アレルギー薬で軽快することが多いので,必ずしも診断をつける必要はないかもしれませんが,中等度以上では2種類の抗アレルギー薬であったり数種類の整腸剤(酪酸菌や乳酸菌,ビフィズス菌をまぜます),時に炎症をおさえる5ASA製剤,さらにはステロイドを用いないと症状が改善されない場合がありますので,症状の程度によっては必ず生検を行い好酸球の浸潤の有無を確認します。
内視鏡所見としてガイドラインではびらん,浮腫,発赤と記載されていますが,当院でももっとも検出されるのが腸管の浮腫,そして,中等度になると一見潰瘍性大腸炎のような小黄色斑やびらん,粘膜粗造,そして部位によっては唐草模様変化からもよく好酸球が検出されます。
浮腫は検査のための下剤の影響も加味しなければならなく,検査をする医師の主観になってしまうので,なかなか所見をとるのに難しいところもあります。
そして潰瘍性大腸炎との鑑別が最近では難しいなと思っていますが,基本的に潰瘍性大腸炎は直腸から連続して病変が存在し,好酸球性胃腸炎では病変はskipして存在し,意外と腸管の輪状方向に所見のびていることが多いです。
↑好酸球性胃腸炎の内視鏡所見
過敏性腸症候群かもという患者さんの中には好酸球性胃腸炎の患者さんが相当数混在している可能性があると思います。
元治療で症状が改善されていれば問題ありませんが,なかなかよくならない場合や,しっかり診断をつけておきたいという方は是非ご相談にいらしてください。
追:好酸球性胃腸炎の方は,過去を含め他のアレルギー疾患をお持ちの方が比較的多いと思いますし,現在の診断基準の副項目にも記載されています。
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