皆さんおはようございます!!
札幌市は東区にある栄町消化器・内視鏡内科クリニック 院長の独り言です。
8月に入ってまた暑さが増してきました。
こんな日はビールがうまいという方も多いのではないでしょうか?
アルコールだけでは脱水になりやすいので,アルコール以外の水分補給も忘れずに,ほどほどにしてくださいね。
さて,今日は昨日の新聞から。
タイトルはかぜに抗菌薬見直そう。
ここでは一般市民の抗菌薬(抗生剤)の認識の間違いを指摘している。
一般の感冒(かぜ)は上気道炎,咽頭炎であるが,多くはウイルス性の一過性のものが多い。
残念ながらこのウイルス性のかぜに抗生剤は効かないのだ。
つまり抗生剤使用しようが,しまいが,その後の経過に差はないと考えられる。
加えて,不必要な抗生剤を使用すると有害事象や耐性菌が問題となる。
これは抗生剤を使用することで,腸内細菌も殺菌されてしまい,普段はこの腸内細菌によって増殖を抑えられている菌が繁殖をして,下痢や腹痛,血便といった症状を引きおこす。特に免疫力の落ちている方や,持病を持っている方に重症化するケースもみられる。
栄町消化器・内視鏡内科クリニックでも開院してまだ間もないがすでに数人,抗生剤が原因で体調を壊し,来院されている。
そして耐性菌だが,数十年前は第一世代セフェム,(簡単に言うと殺菌する菌の種類が少ない抗生剤)でも十分加療ができたが,今は第一世代だけではなく,次の世代の第二世代,さらに第三世代セフェム抗生剤にも耐性(強い)菌が,増加している。
また強い殺菌をしめすニューキノロン系の抗生剤も昔は,ほとんどの菌に効果を示していたが,軽度の尿路感染症,腸管感染症,かぜにも安易に処方され続けた結果,今はこの抗生剤に強い菌が増加している。
たった数十年でかわってしまったのだ。
私は消化器内科専門だが,便培養や腸液培養をみても,おなかのなかにいる大腸菌でさえ,最近は抗生剤の効果を減弱させる大腸菌(ESBL:extended-spectrum β-lactamase)が増加していると思う。
このESBL産生大腸菌は,抗生剤を使用していない,若い人たちにもみられる。おそらく,抗生剤の不適切使用によって産み出された大腸菌をもらったのだろう。これは親子,兄弟でも感染拡大させてしまう,可能性を意味しているのではないだろうか?
抗生剤の使用に関しては厚生労働省も懸念されており,感冒の抗菌薬不使用を推奨と発表している。
にも関わらず,漠然と抗生物質が処方されているケースを目にすることも少なくない。
患者の希望,という理由が多くあるようだが,未来の子供たち,自分たちを守るためにも適切な抗生剤使用が大事だと思う。
ただし,しっかり抗生剤治療しないと重篤化するケースがあるのも間違いなく,特に消化器領域では胆管炎や胆嚢炎,腸閉そく,そして他にも膀胱炎をのぞいた尿路感染症(腎盂腎炎),基礎疾患のある肺炎,扁桃周囲膿瘍,筋膜炎,髄膜炎では抗生物質が必要だ。
それでも起因菌といって原因となる細菌はそれぞれ異なり,重症度にも応じるが,必要だからと言ってただ漫然と広域スペクトラム(やっつける菌の種類が多い)の抗生剤を使用するのではなく,目的にあった抗生剤を使用するように心がけなければならないと思っている。
栄町消化器・内視鏡内科クリニックでも効果のない抗生剤治療は漫然と行わず,抗生剤治療が必要か悩ましい場合は,採血や検尿をはじめ検査を行い,治療が必要か判断しています。
外来で抗生剤治療が必要な場合も,広域スペクトラムの抗生剤ではなく,適正な抗生剤を使用することを心がけ,特殊な治療,しっかりした治療が必要な場合は,治療のできる病院をご紹介しています。
また対症療法で改善しない場合は再検査,抗生剤治療が必要になる場合もあります。
かぜ,腸炎,肺炎も診断,治療をしています。
お困りのこと,気になることがあれば,9月2日土曜日に院内で勉強会,その後質問コーナーを設けておりますので,お気軽にご相談にいらしてください。
院内に飾られている今月の一枚です。8月っぽくミクロネシアです。
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