胃がんはピロリ菌から慢性胃炎となり、発がんに至ることがわかってきたわけですが、ピロリ菌の陽性者は年々減少してきており、今後は減ってくることが予想されます。
一方でピロリ菌が陽性であった場合、除菌を行ってもピロリ胃炎の多くはそのまま残存し、発がんの危険がなくなったわけではないことを理解しておく必要があります。
ピロリ胃炎になると正常の胃粘膜が減少するため,胃酸の分泌が低下しますが,ピロリ胃炎が減少している昨今,この胃酸がもたらす疾患,つまり逆流性食道炎(GERD)が増えており,加えてストレスが誘因になることが多い機能性ディスペプシア(FD)の患者さんが増えています。逆流性食道炎は胃酸の分泌が低下しないことに加えて,体重が増えるごとに胃酸の分泌量は増加します。そして肥満,肉類や脂肪の摂取,血圧の薬(カルシウムブロッカー),硝酸薬といった内服薬,亀背などは胃から食道への逆流をもたらします。また軽微な運動は逆流性食道炎を改善させますが,過激な運動は逆流を増やすこともわかっています。従って逆流性食道炎は治ったと思っていても,再発することが多いのです。治療はプロトンポンプインヒビターが中心ですが,内視鏡での逆流性食道炎の程度や発がんの危険がある場合は長期にPPIの服用が必要になる場合があるので,内視鏡検査が推奨されます。機能性ディスペプシアは実に胃が痛いと病院を受診される患者さんの二人に一人がこのFDであるとも言われており,治療薬に種類が多く,効果に個人差が大きいため,出された薬があわないとすぐ病院を変えてしまい,病院を転々とされている患者さんもみられます。また薬をもらってすぐよくなるケースよりも2週間から4週間内服を続けることによって改善されるケースが多いため,患者さんにあった薬をみつけ,効果がでるまで,ある程度の時間がかかります。
また近年増加している胃の病気として,薬による胃の障害(薬剤性潰瘍),好酸球性胃腸症があげられます。痛み止め(湿布を含む)や脳梗塞,心疾患で内服されている方は要注意です。この潰瘍の多くは痛み止めで症状が抑えられていることもあり,出血するまで自覚症状がないことが少なくありません。また潰瘍ができやすい,出血しやすい人が分かってきていますので,その場合は予防が重要です。最後に昨今は環境が整備されることによって喘息やアトピー,蕁麻疹といったアレルギー疾患が増えてきていますが,消化管も例外ではありません。好酸球浸潤による胃炎や十二指腸炎もみられます。
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