胃がんの減少とは対照的に増加してきているのが大腸がんです。
大腸がんはファーストフードなど食の欧米化とともに増加し、飲酒、喫煙、男性の糖尿病、肉食(赤身),肥満が危険因子といわれています。加えて食物繊維摂取の減少、運動不足がさらに大腸がん増加の一因です。胃がんは内視鏡検診が可能となってきましたが、大腸がんは欧米では内視鏡検診を受けられる国が増えてきていますが、本邦ではまだまだ先のことでしょう。大腸がん検診には便潜血検査(免疫法)が推奨されていますが、検診のcheckをしていると1日しか提出されていない方もみられます。1日では進行がんであっても陽性になる確率が50-70%程度、2日提出してやっと70-80%になります。さらに早期がんになると2日提出しても便潜血で拾い上げられるがんは50%前後にまで低下してしまいます。つまり「便潜血が陰性=大腸がんではない」といことにはならないので、便秘や下痢、腹痛など症状がある方は内視鏡検査を受けていただいた方がよいと思います。便潜血検査で一度でも陽性であった場合は大腸内視鏡検査が必要であり,病院によっては内視鏡の時に大腸がんになる可能性のあるポリープを切除することも可能です。
また昨今は鼻炎や喘息といったアレルギー疾患をお持ちの方が増加していますが、消化管も例外ではありません。腹痛や下痢を繰り返したり、長期間続く場合に内視鏡検査を行い、異常がみつかった部分を組織の検査に回すと好酸球というアレルギーの時に上昇してくる血球が多くみられ、実際にアレルギー検査を行うといろいろとでてくることもすくなくありません。昨今の研究でこのアレルギーは免疫の暴走であり、この暴走を押さえる役割が腸内細菌であることがわかってきました。つまり「腸活」が重要なのです。
そして、クロストリジウム腸炎や病原性大腸菌が検出されるケースも少なくなく、日本人の腸内環境の変化が推察されます。加えて抗生物質の服用、長期の制酸剤の服用も腸内環境に影響を与える可能性があるので、薬の見直しが必要な場合もあります。
また近年は運動不足、食物繊維不足、内服薬からの便秘患者さんが増加しています。高齢者,特に認知症の患者さんでは便秘の有病率が非常に高く、便秘が認知症の最初の症状であったということも少なくありません。便秘は虚血性腸炎、痔疾、直腸潰瘍などを引き起こし、最悪硬い便が腸を破って命取りにさえなることがあります。さらに便秘では心筋梗塞や狭心症,そして排便後失神が起こりやすいといわれています。便秘が原因でお亡くなりになったケースも意外とみられます。「たかが便秘されど便秘」なのです。患者さんに話をきくとたかが便秘で恥ずかしい、すみませんといったお声を頂戴しますが、放置すると重篤になることもある状態ですので、恥ずかしがらずに病院を受診されることをお勧めします。さらに下剤の使用方法に関して2017年やっとガイドラインが刊行され、今までとは推奨、治療方法が異なってきています。また,市販の下剤の乱用は種類によっては便秘を悪化させることもあるので、注意が必要です。
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