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    院長の独り言20

    2017年5月22日
    By sakaemachi-staff
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    こんにちは!! いつものごとく札幌市東区にある栄町消化器・内視鏡内科クリニック院長の佐藤 龍です。

     

    久しぶりに看護師長にブログを乗っ取られました。お手柔らかに内視鏡検査を行います。多分師長に検査をするのは初めてかもしれません。

    天気予報では全国各地で真夏日,ところどころ猛暑日だというので札幌は肌寒い風が吹いていますね。

    今週末は運動会という方も多いのではないでしょうか?当日天気のみならずおなかをくずさないように祈っています。

    さて,前回前々回と便秘についてつぶやいておりました。

     

    と,いうことは今回は下痢についてです。運動会を控えた今だからこそ気をつけたいものです。

     

    さて,下痢の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?皆さんが思いつくものもいくつかあると思います。

    今時期気をつけたいのが

    1.  食中毒

    でしょうか?医学的には急性胃腸炎といわれ,原因はウイルス(ノロウイルスやロタウイルスなどウイルス性胃腸炎)や細菌(キャンピロバクターやサルモネラ,ビブリオなど細菌性胃腸炎)が多くを占めます。また患者さんに説明するときは「おなかのかぜ」といった表現をすることもありますが,すべて同意義です。ウイルス性胃腸炎はインフルエンザと同じ冬に多く,細菌性胃腸炎は今時期から増加し7-8月にピークを迎えます。これが集団でおこると集団食中毒と言って問題になってくるんです。

    今運動会にむけて注意しなければならないのが細菌性胃腸炎ですが,これから増えてくるキャンピロバクター腸炎は以前のブログでも書きましたが,感染(おなかの中に菌が入る)してから症状がでるまでに2-8日(だいたい4-5日)なので,週末運動会であるなら今気をつける必要があります。原因食材は鶏肉や牛肉といった肉類の過熱不足が多くを占めますので,今日明日お肉を食べるご家庭では特に生焼けに注意してくださいね。

    またサルモネラやビブリオはそれぞれ生卵,生魚が原因となることが多く,感染から発症まで8-24時間ですので,運動会の前日は特に気をつけた方がよいでしょう。

    また他にもお弁当もブドウ球菌などが原因で家に帰ってから腹痛が生じる場合があるので,卵料理やチャーハン,生の野菜などは控えた方がよいといわれています。

     

    2. 薬剤性腸炎

    実は結構あるがなかなか知られていないことです。具体的には胃酸を抑える薬(プロトンポンプインヒビター)や痛み止め(NSAID),そして実は下剤そのものが原因となることがあります。これらは原因となる薬剤の中止が必要となってくるので下痢された場合は再度今のまれているお薬を確認しましょう。初期のころは上の食中毒と鑑別することは難しいのですが,特徴としては下痢が長く続く(一般の胃腸炎は2-3日で軽快することが多い),腹痛がない,熱がないといったことが挙げられます。したがって胃腸炎だねといわれても改善しない場合に考えていきます。collagenous colitisという概念もあって大腸検査が診断に必要になる場合があります。

     

    3. 偽膜性腸炎

    これも薬剤性腸炎と原因は似ていますが,抗生剤や胃酸を抑える薬を服用されている,または点滴で使用(抗生剤の場合は2か月以内なら可能性があります)された場合に考えなければなりません。軽症で終わることも多いのですが,重篤化して入院が必要になったり,命にかかわる可能性もあります。特徴としてはどろっとした(粘液)便に血液が付着することがあるのと,発熱,採血で白血球の上昇を伴うことが多いです。疑わしい場合は便の培養検査やCT,大腸内視鏡検査が有用なことがあります。クロストリジウム腸炎とも呼ばれ原因となっている菌がわかっており,メトロニダゾールやバンコマイシンといった内服が必要になることも少なくありません。

     

    4. 炎症性腸疾患

    潰瘍性大腸炎やクローン病が代表で,若年者に多い病気と言われていますが,潰瘍性大腸炎は中高年にもみられます。長期にわたり下痢が持続したり,体重減少,口内炎がよくできる,痔ろうがあるという方は一度検査をお勧めします。いずれも完治というのは現在の医療では難しく,良い状態と悪い状態を繰り返していくためより良い状態(寛解といいます)を保つための治療が必要となります。また好酸球性胃腸症といってアレルギーの原因となる好酸球が腸に大量に存在して下痢や腹痛の原因となることもあり,大腸検査や胃カメラの十二指腸粘膜の組織検査が有用です。

     

    5. 食事性アルコール

    脂肪分の多い食事をとったあとやアルコールを摂取されると下痢することがあります。

     

    6. IBS 過敏性腸症候群

    下痢や便秘を繰り返したり,排便時腹痛があるが排便すると軽快することが特徴です。下痢が主な下痢型と便秘が主な便秘型があります。下痢型の過敏性腸症候群の場合,専用の飲み薬もありますが,あくまでも除外疾患といって他の病気がない場合に診断されます。

     

    7. 大腸がん

    以前芸能人でもありました。胃腸炎と思っていたら大腸がんだった。特にS状結腸や直腸に進行がんがあった場合,大腸の中が狭くなっているため通常の便ではでてこず下痢状となり,一回には大量に便がでないなめ回数が多くなります。血便があったり,便をしてもすっきりしない,下痢以外に便が細くなった,体重が減っている場合は検査をお勧めします。

     

    下痢といっても原因は非常に多岐にわたるんですね。下痢の初期は頻度から言っても胃腸炎が多いので胃腸炎の治療からなされる場合が多いですが,数日たっても改善しない場合は一度検査を受けられることをお勧めします。

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